崖の途中に、プラネタリウムの破片でできた教室が在った。
いつだったか、誰かと星を見た。
クラスのみんなはいつも裸だった。
誰も気にしていなかった。
そこら中に這っている真っ白なホース。
口を握ると水が出るようになっている。
床に灰が溜まっていると
誰でも流せるようになっている。
私たちは
裸であったために
お互いの区別を頻繁に忘れた。
手を伸ばして相手の体に触れることで
自分の体温を知る。
相手は振り向き、
空虚な眼差しから、徐々に焦点が合う。
手を繋いで歩くと
まるで独りで在るような気分になる。
この廊下の先には、
何が待っているんだろう。
灰が在れば手を放し、
白いホースを握る。
そしてなるべく遠くの方へ
灰を流し飛ばす。
*
生まれる前は 二人だった気がする。
母はいつでも還って来なさい、と囁いていた。
“ あなたたち、”と。
親密な冷たい羊水であった。
見上げた先には、
崩れた満月のような心臓が
規則的に脈打っている。
私は、私と手を繋いでいた。
まだ何の感覚も生まれていない子宮の中で、
双子だったという信号だけが頭の中に残っている。
出口が、
ひとつしかないので、
ひとりになろう
と
私が言う。
どちらがどちらかも分からない状態で、
お互いがどちらも相手に吸収されたい。
相手の中に入ろうとする。
とても気持ち悪いものが頭に込み上げて来た。
“ 生まれて初めて、” 私はひどく泣いた。
微笑んでいる。
花嫁の眠りを
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