20120310

(node" 1 ".)

玄関を出ると、風が吹いていた。
ドアを勢い良く開け放つと、
手からドアノブの感触が消えた。
私は谷に張り出したベランダに居た。
今にもこと切れる吊り橋のような、木の骨だけのベランダ。
床の隙間から見える地上は、別の世界のように遠い。

干え上がったナイアガラは、広大なグランドキャニオンのようにどこまでも続く。
水の逃げた空気は、まだ少し湿っていて、高所に居る恐怖心を煽る。
まるで別の生き物みたいな笑いがこみ上げる。
振り返ると、海が朝日に輝いていた。
その上。
廃墟のような海賊船がゆるゆると浮いていて
死刑台の板の上では、
目隠しをした女たちが
笑いながら踊っている。
空間が層を成して類似する。
花の匂い。
キラキラと煩い、ガラスの周波数。
アネモネ。
雪の降る音。
血の煙。
藍色の堕落。
どこまでも続く水の音。
こどう。

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