千切れそうな吊り橋を、彼女はしろつめ草で繋いでいた。
そこへ通りかかったのが僕。
僕は、吊り橋を渡りたかった。
ねぇ、君、この橋を渡らせてくれないか。
彼女はゆっくりと僕に焦点を合わせてから、
渡りたいなら、渡れば。
と、呟いた。
僕は落ちた。
後から降ってくる花は、白。白。白。
*
それが楽しくて、僕はまた彼女に会いに行った。
彼女は以前よりたくさんのしろつめ草を結っていて、
僕が声をかけたらまた、同じ速度で焦点を合わせた。
僕が声をかけたらまた、同じ速度で焦点を合わせた。
ねぇ、また、渡ってもいいかな。
彼女はゆっくりと頷いた。
渡りたいなら、どうぞ。
僕は前より、白くなった橋を渡る。掌で花を撫でる。
僕は落ちた。
まるでシャボン玉を作るそばから壊していくようなじゃれ合い。
僕は落ちたまま物思いに耽っていた。
白く流れる白と共に、次は花を集めに行こうと決心した。
三度目に橋の前に来たとき、彼女はもう、橋を編んではいなかった。
橋は真っ白で、とても頑丈そうで、綻びは一つも無いみたいに見えた。
僕は小石を蹴って、花をばら撒いた。
*
数日後、気まぐれでそこを通った時、橋が枯れていることに気が付いた。
そして橋の入口には、枯れた冠を頭にのせた君がいた。
僕は彼女の頬を丁寧に、両手で包んでから、眼を閉じた。
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